… 最初の恋 … 5






初めて見た恭介の裸は同じ男の俺でも見惚れてしまうくらい完成された大人の
男のものだった。

この腕の中に何人の人が包まれたんだろう。

そんなことを考えてしまってその悔しさから首筋の一番目立つ場所に吸い付いた
俺を恭介は怒らなかった。

シャツを着ても隠れない、そんな場所に俺が付けたキスマークが俺の存在を主張してる。


恭介には俺がいる。
だから、誰も恭介に触れないで。


でも、俺が強気でいられたのもそこまでで後は恭介にされるがままだった。
頭から足の先まで恭介の唇が触れてない所は無いんじゃないかと思うくらい身体の
隅々まで愛されて、頭も身体も蕩けきって俺は恭介から与えられる快感に
自分じゃないような声をあげてただ、乱れていくだけだった。
恭介を受け入れた時ですら俺は訳が分からなくて苦しさとその合間に訪れる快感に
翻弄されて無我夢中で恭介に縋り付いていた。
想像してたよりも苦しいのに。
俺の心は満たされていた。

恭介が俺の中にいる。

それは凄く幸せで温かい。
なんか女の子みたいで嫌だけど今、恭介は完全に俺だけのものになってる。


好き。


好き、好き、好き―――こんなに好き。


恭介がいれば何もいらない。

誰にも触れさせない。

誰にも渡さない。

俺だけの恭介。


「…好き…す、き…」

恭介の作り出すリズムに揺さぶられながら恭介にしがみ付き繰り返す俺に
恭介は優しいキスをくれた。

「俺もだよ」

少し息の乱れた恭介の掠れた声が耳元で囁く。
朦朧とした頭の中に恭介の言葉が染み込んでいく。

「…あっ…!あ…んっ」

その言葉をきっかけに速くなりだした恭介の動きに煽られ俺は二度目の熱を放った。




































まだ完全に熱の治まっていない身体をまるで壊れ物でも扱うように優しく
抱き締められて、大好きな恭介の大きな手で何度も髪を梳かれる。
俺の額にはさっきから何回も恭介のキスが降りてきてる。


こんなに大切にされてる。


恭介の腕に頭を預けたまま、恭介を独り占め出来てるという満足感に俺は
嬉しくなって恭介にぎゅっと抱きついた。

「うん?どうした?」

少し笑みを含んだ声が優しく囁く。

「…俺のこと、好き?」

答えは分かってるけど、どうしても恭介の口からちゃんと聞きたい。

「あぁ、好きだよ」

「どれくらい?」

ほんの何時間前まで子供扱いするなって言ってたくせに俺がした質問は
子供そのものだった。
そんな俺にフッと笑う声が聞こえる。

「安心しろ。お前のことしか見えないくらい俺はお前に夢中だよ」

それは凄く気障なセリフなのに、その言葉に俺の中から不安が少しずつ消えていく。

「俺も好き…恭介が好き」

恭介に抱きついたまま、自分の気持ちを伝える俺の背中を恭介の手が優しく撫でる。

「珍しく素直なんだな。それより、身体は大丈夫か?辛く無いか?」

からかうような口調だけど恭介は背中を撫でる手を休めないで俺を気遣う言葉を
囁いてくれてる。

こんなに大切にされて、甘やかされて、欲しい物は全て与えられる。

さっきのHだってそうだった。
恭介は凄く俺を気遣ってくれた。
全て俺の快感を優先してくれた。

「愛してる」

その言葉を繰り返しながら初めての俺の苦痛を少しでも和らげようと気が
遠くなるくらい愛してくれた。
だから、苦痛がなかった訳じゃないけど俺の初めてのHは全身が蕩けそうな
快感に充たされたものだった。
でも、恭介はどうだったんだろう…
俺とHして恭介は気持ち良かったんだろうか。
恭介に背中を撫でられながらふと、そんな疑問が頭に浮かんだ俺は何も考えず
その疑問を口にしていた。

「恭介は?恭介は俺とHして気持ち良かった?」

しまった、と言ってしまってから気付いた。
何てこと聞いてるんだろう。
Hの後に相手に気持ち良かったって聞くなんて…

「今のナシっ、忘れてっ」

自分のした質問の余りの恥ずかしさに俺は慌てて恭介の腕の中から逃げると
寝返りを打って恭介に背中を向けた。

もう、サイテー…
穴があったら入りたい。
ううん、埋まりたい。

恥ずかしさから背中を向けたままの俺の背後から恭介のクスクス笑う声が聞こえる。
いつもなら笑わないでって怒るけど今の俺にはそんな余裕もなくて…
只、背中を向けている。
そんな俺の背中を恭介の温かさが包む。
背後から抱き締められて耳の裏に口付けられる。

「直は、直の中は最高だった」

耳元で囁かれた言葉は簡単に俺の身体の熱を上げ心拍数を増やしていく。

「…ばか」

そう返すのが精一杯だった。

「一人でシャワーは無理だろう?タオルを濡らしてくるから」

髪にキスをして離れようとする恭介の腕を掴んで俺は振り向いた。

「どうした?」

何処までも優しい瞳に優しい声。
きっと、こんな恭介は俺しか知らない。
誰にも教えてあげない。

「…もうちょっとこうしてたい。ねぇ」

少し甘えた声で強請ってみる。
そして、恭介の指に自分の指を絡ませ上目使いに恭介を見る。
俺だってこれくらいのことは出来る。

「…分かったよ」

一瞬、目を細めて俺を見下ろした後、恭介は苦笑いを浮かべて俺を引き寄せた。

ほら、俺が望むものは何時だって恭介が与えてくれる。

小さな願いが叶えられたことに嬉しくなって抱きついた俺に恭介の小さな溜め息と
一緒に最高の告白が聞こえた。

「…全くお前は。俺を良いように手の平で転がして。お前には敵わないよ」

と。






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