… 最初の恋 … 4






シャワーを浴び、恭介が用意してくれたバスローブを羽織る。
髪をタオルで簡単に乾かした後、俺は洗面台の鏡に映ってる自分の顔を見詰めた。
そこには複雑な顔をしている俺がいる。


大丈夫、怖くない。

何も怖いことなんてない。

やっと恭介が俺だけのものになるんだから。

誰にも渡さない、触らせない。

絶対に。


駆け引きなんて知らない。
どうしていいかも分からない。
そんな、俺に出来るのは全身でぶつかっていくだけ。
そう、俺全部で恭介にぶつかっていくだけ。
自分にかつをいれる為に両手で自分の頬を軽く叩く。
それをきっかけに俺は鏡の中の自分に微笑むと俺を待つ恭介の所に向かった。









































「それ…」

シャワーを浴び終わって恭介が待っている寝室に入った俺が見たのはサイドテーブルに
置いてあるスコッチウイスキーの瓶とその横にあるグラスだった。
グラスの中には赤褐色の液体が入ってる。

「俺が貰って良かったんだよな?」

恭介は嬉しそうに笑ってる。

「…うん」

だって、恭介の為に買ってきたんだから。

そう思ってベッドに座ってる恭介の前に行き、軽く頷くと優しく腕を引かれた。
恭介に腕を引かれるままに恭介の隣に座る。

「よく、俺の好きな酒が分かったな」

優しい目で見詰められて問掛けられる。

「…雅兄に聞いた」

「そうか、ありがとう。凄く嬉しいよ」

蕩けそうな笑顔で微笑まれて俺の唇に恭介の唇が軽く触れる。

「…なんで、それが好きなの?美味しいの?」

触れるだけのキスの後、雅兄に電話で言われた言葉を思い出した俺は恭介に聞いて
みることにした。

「佐藤に何か言われたのか?」

「うん。渡した後、なんでそれが好きなのか聞いてみろって」

「あいつには参ったな」

恭介は気まずそうに笑ってる。

「なんで好きなの?」

なんか特別な理由でもあるんだろうか。
そう思い、恭介を見詰める。
そんな俺に恭介は困ったように笑った。

「…お前に似てるから、好きになったんだ」


俺に似てる?

俺はお酒のことは良く知らない。
特にこんなに強いお酒が自分に似てるって言われても飲んだことが無いから良く分からない。

「俺に似てるの?」

どういう風に似てるんだろう。

「あぁ」

どこが似てるのか知りたくて俺は恭介に目で問掛けた。

「…何処までも苦い、香りが強過ぎる。それに複雑でコロコロと変わる」

「何、ソレ。悪い所ばっかじゃん」

なんか、俺の悪い所ばかり似てるようで俺は少しムッとしてしまった。

「…でも、苦いだけじゃない。苦味の中に同じくらいの甘さが隠れてる。
 最後の最後に飛んでもなく甘くなる。それにコロコロと変わる表情に
 目が離せない」

頬を撫でられながら告げられた言葉に俺は恭介から視線を外せなくなった。

「飲んでみるか?」

恭介の問掛けに俺は頷いた。
そんな俺の前を恭介の腕が通り過ぎ、グラスを掴む。
手渡されると思ったグラスは何故か恭介の唇に運ばれてる。
これから何が起こるのか分からなくて只、恭介の行動を見ているだけの俺に恭介は
目だけで微笑むと優しく俺をベッドに押し倒した。

優しく微笑む恭介の顔が近付き唇が重なる。
反射的に開けた口に恭介が口に含んでいたウイスキーと一緒に恭介の舌が入り込んでくる。

「……ん…っ…」

強いアルコールの味と俺の口の中で蠢く恭介の舌に頭の芯が痺れていく。

きっと、アルコールのせいだ。

初めて飲んだウイスキーは俺には刺激が強すぎてだんだん、身体が熱くなって
判断力を俺から奪っていく。
だから、それを言い訳にして俺は夢中で恭介の舌を追った。

「…ふ…っ……んっ」

洩れる声も今はどうでもいい。
声も隠さずキスに夢中になっている俺の太腿をバスローブの裾から滑り込んできた
恭介の手がゆっくりと撫でる。
徐々にその手は上に上がり俺の腰に辿り着くと動きを止めた。
手の動きが止まると同時に唇もチュッと軽い音をたてて離れて行く。
訳が分からなくなってる俺を恭介は見下ろしてる。

「…どうして…?」

止めたの?

そう聞きたかったのに言葉は最後まで言えなかった。

「シャワーを浴びてくるよ」

そう言い、俺から離れようとする恭介の腕を俺は掴んだ。
恭介がシャワーを浴び終わるまでなんて待てない。
一人にされたらくじけるかもしれない。
それに、早く恭介が欲しい。
そう、思った俺は自分からバスローブの紐をほどくとバスローブの前を開いた。

「シャワーなんていい。俺を見て、俺だけを見て。俺に触って」

驚いた顔をして俺を見てる恭介のベッドについていない方の手を取り、自分の胸に導く。
羞恥心が無い訳じゃない。
現に今だって俺の心臓は爆発しそうに高鳴ってる。
そんな俺の胸を恭介の指がツーッとなぞり始める。
触れるか触れないかの感覚に身体がざわめく。
俺を見下ろしてる恭介の視線は熱くて、それだけで俺の身体に火がついていく。

「…恭介…」

その熱さに待ちきれず俺は身体を少し起こすと恭介の首に腕を巻き付け、
恭介の唇を塞いだ。






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