… 全ては貴方で満たされる … 4






気が遠くなるくらい、恭介の指で恭介を受け入れるところを慣らされたのに三週間振りに
受け入れた恭介の圧迫感はやっぱり俺には苦しくて俺はその幸せな苦しさに眉を寄せた。

「…直?大丈夫か?」

汗で額に貼りついた俺の前髪が恭介の手で優しく取り除かれる。

優しいくせに容赦のない愛撫でさっきまで俺を苛めてたくせに。
静かに目を開けるとそこには心配そうに俺を見てる恭介の顔があった。

こんな時にこんな顔で俺を気遣う言葉を言う恭介はやっぱり、ずるい。


「…辛いなら、止めようか?」

何も言わない俺に恭介は益々、心配そうな声を出すと苦笑いをして俺から離れようとした。

「…だ…めっ」

離れかけた恭介の身体に俺は夢中でしがみ付いていた。

「…直?」


苦しくてもいい。

やっと、こんなに近くに恭介を感じれるのに離れるなんて嫌だ。


「…大丈夫だから、だから…」


離れないで。
俺の中にいて。

思いを言葉にはしなかったのに恭介は俺の言いたいことを分かったように夢中でしがみ付く
俺に優しいキスをくれた。

「時間はたっぷり有るから。ゆっくり愛し合おう」

優しく囁かれて何度も優しいキスをされる。

額にこめかみに唇に。


「…直、愛してる」

部屋の中を照らす柔らかな黄金の夕陽の光のように降り注ぐキスとその合間に囁かれる
照れ臭いセリフに心が柔らかくなっていく。

もう、大丈夫。
俺は恭介を受け止められる。

「…恭介…」

そのことを伝えたくて俺は恭介の名前を呼んで恭介を見上げた。

「うん?」

「…もう…大丈夫だから…」

「大丈夫って?」

俺が何を言いたいか分かってるくせにわざと聞き返す。
動いてもいいってことを言葉にするだけでも俺は恥ずかしいのに。
俺が恥ずかしがることを知っていてわざと俺に言わそうとする。

「……ばか…」

さっきまで心配そうな顔をして俺を宥めていたくせにもう、余裕を纏って俺をからかう
恭介にムカついて俺は顔をプイと横に向けた。

「動きたいのですが、よろしいでしょうか?」

少し笑みを含んだ声で告げられる許しを乞う言葉に目を閉じ、小さく頷く。

分かったって返事の代わりはこめかみに落とされたキスだった。

































「…あっ…ぁ…ん」

さっきまで苦しかったことが嘘みたいに今の俺には快感しかない。
自分の口から出る甘い声も我慢出来ない。

恥ずかしいなんて感情はいつの間にか俺の中から消えていて恭介がくれるおかしくなりそうな
ほどの快感を夢中で追ってる俺がいる。

髪の毛一本から足の爪先まで俺の中は恭介でいっぱいになって恭介で溢れてて、もう、
恭介のことしか考えられない。


恭介しか感じない。


「…きょ…すけっ」

俺を埋め尽してる恭介の名前を呼んで恭介をもっと感じたくて閉じてた目を開ける。

目を開けた俺が見たのは額に少し汗を浮かべた恭介の真剣な顔だった。

「そんな目で俺を煽るな…」

俺の視線に気付き、恭介が微笑む。
その笑顔は本当にかっこ良くて艶っぽくて俺は自分から恭介の顔を引き寄せると恭介に
キスをした。

夢中で恭介の舌に自分の舌を絡ませて恭介の舌を愛撫しながら恭介の身体に足を絡ませる。


もう、何も分からない。

考えられない。


「…へんに…っ……ちゃう…っ」

キスをきっかけに速くなりだした恭介のリズムに素に戻ったらまともに恭介の顔を見れなく
なるような言葉をうわ言のように呟いて俺はいつまでも恭介にしがみ付いていた。


































…又、やってしまった


Hが終わって恭介の腕に頭を乗せたまま、俺は溜め息をついた。
その俺の溜め息に俺の髪を梳く恭介の手が止まって次にクスッと笑う声が聞こえた。

笑うなんて信じられない。
俺の溜め息は恭介のせいなのに。

「なに、笑ってんの?」

だから、俺はムカついて恭介を睨んだ。

「別に笑った訳じゃないよ」

「…嘘つき」

楽しそうな恭介に余計、腹が立つ。

「久し振りにお前の可愛い顔が見れたから嬉しいんだよ」


可愛い顔って…


一気に顔に血が集まるのが分かる。


「そうそう、可愛い声も聞けたしな」


可愛い声って…


「…ばかっ」

「さすがに“変になっちゃう”は刺激が強すぎたけどな」

微かに覚えてる自分の言葉に俺は眩暈を起こしかけた。
後悔しても後悔しきれない。


やってしまった…

“変になっちゃう”なんて。

自分でも信じられない。
て、いうか、もとはと言えば恭介のせいなのに。
それに付き合う前から気付いてたけど恭介は絶対、遊んでた。
だって、こんなにかっこ良くてレディファーストなんだからもてない訳ない。
それはバレンタインのチョコの数で証明されてる。
て、なんかムカついてきた。
今の今まで考えもしなかったけど、もしかしたら俺と遊んでた時も誰かと遊んでたのかも
しれない。
そんな勝手な想像を一人で膨らませた俺は更に恭介を睨んだ。

「恭介ってタラシだよね」

「いきなり、随分なことを言うんだな」

ふて腐れて言った俺に恭介は苦笑いを浮かべた。

「どうして、そんなことを思うんだ?」

「…どうしてって…だって…」

次の言葉を言おうかどうしようか、俺はちょっと悩んだ。

「だって?」

先を促す恭介に俺は決心した。

この際、言ってやる。

「だって、気障なこと平気で言うし、H巧いし…」

Hが巧いって言葉に顔から火を吹きそうだったけど、俺は我慢した。

「Hが巧いって、それはお前が俺とのセックスで満足してるって意味だと
 取っていいのかな?」

俺が恥ずかしがることを分かっててわざとHをセックスって言い直す。
しかも、質問を質問で返して。

でも、ここで敗けちゃダメだ。
ここで退いたら又、いつもみたいに恭介のペースになってうやむやにされる。
そう思い、俺は心の中で気合いを入れた。






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