… ろくでなしの恋 …










熱い吐息

しっとりと汗ばんだ肌

そして

俺を包む温かいぬくもり

ざまぁねえなぁ…

自分がろくでなしなのはずっと前から気付いてたけど、ここまでとはなぁ
自嘲気味に笑って俺の上で唇を噛み締め、声を洩らすまいと堪えているガキの背中を
そっと撫でる。

「…ぁ…っ…」

とうとう堪え切れなくて洩れた声に更に自分の分身が体積を増したのを自分で自覚する。
たかが声くらいで興奮してんじゃねーよ、この、ろくでなし。
なんて、自分に毒づいてみても、12歳も下のガキに笑っちまうほど嵌ってるのは事実で。
その事実は消せない。

「ガキのくせに声、我慢するなんて、器用なことすんなよ…」


情けねぇ。

ガキを諭すようなこと言う、テメェの声はなんだ?
掠れてるじゃねぇか。

「哭けよ…もっと、声、聞かせろ…」

「…そ…とに…聞こえ…る…っ」

当たり前過ぎる理由をたてにガキは譲らない。

そりゃ、そうだろう。

物理準備室で教師と生徒がナニしてるなんてバレた日には俺はクビ、コイツは保護者や
生徒達の噂の種になる。
どうせ、俺はろくでもない教師だからクビになろうがどうでもいい。
しかし、コイツは成績優秀で品行方正な生徒会長だ。

「……わりぃ…」

こんな学校の中で生徒を押し倒すろくでなしながらも俺は心底悪いと思った。

もっと、ゆっくりと時間をかけて抱いてやりたい。
いつも、そう思うのに。

ガキのくせに他人を寄せ付けない冷めた顔をしたコイツの笑顔が見たくて、ガキらしい顔が
見たくて、なかば強引に騙まし討ちのように関係をもってからというもの、自分の目に
コイツが少しでも入ると触れたくてどうしようもない自分がいる。

いい年して、なに、サカってるんだか。

姿を見ただけで触りたくなるなんて、ろくでなし過ぎる。
でも、コイツを大切にしてやりたいのも事実で。
らしくない自分に苦笑して、どうせ、らしくないなら、いっそ、もっと、らしくなくなって
やろうと開き直り、腰の動きを速める。

「あ…っ…やっ…」

激しくなった俺の動きに堪え切れず洩れる声に俺の余裕もなくなっていく。

「…やべぇ…」

気持ち良すぎてやべぇ。

そう自覚したとたん、口をついて出た言葉に俺は俺の上で細っこい身体を震わすガキを
抱き締め、唇を塞いでいた。

お前知ってるか。
いい年をした男でも、本当に惚れた相手とだったらイク時、キスしたいって思うって。

何度も何度も角度を変え、唇を貪りながら、細い腰を揺らし、高みを目指す。

「んっ…っ…!」

「……っ…」

夢中でキスをしながら、切迫詰まった声にならない声をあげたガキの声につられるように
呻いた俺はガキがイッたのを確かめてから、自分を解放した。

ろくでなしな俺だって誰かに本気で惚れることもある。

イッた余韻から抜けきれてない脱力した細い身体を抱き締めた俺はセックスよりも深い
悦びを噛み締める。

なんだかなぁ。


「良かっただろ?」

ヤった後に相手にこんなことを聞くのも何年振りだか。

「……」

どう返事を返していいのか分からないガキは俺の目から顔を背け、俺の腕から逃げようとする。
俺はろくでなしだけど、コイツは意地っ張りだ。

惚れてもない男に抱かれて、あんな顔しないだろう?

もう、いい加減、素直になれよ。
お前は俺に惚れてんだよ。

なんて、言ってやりたいのをぐっと堪え、俺はガキの離れかけた身体を引き寄せる。


まだだ。

まだ、本心を晒すには早い。

いい年をしてバカげてるとは思うけど。
そう、お互い、本心を晒け出すにはもってこいの日がもうすぐやってくる。

12月24日、クリスマスイヴ。

クリスマスイヴに愛の告白なんて、いい年をして乙女みたいなことを考えてる自分には
笑えるけど。
コイツの為なら、乙女になってもいいと思う己に苦笑しながら、俺は目の前にあるガキの
耳に唇を近付け、自分でも驚くほどの甘ったるい声で囁いた。

「お前、クリスマス空けとけよ…」

と。






■おわり■




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