platina






「チェーンとトップは何にする?」

親父の友人でジュエリーショップをやっている野中さんに希望を聞かれ俺は即答していた。

「プラチナで」

と。
真に何を贈ろうか散々悩んだすえ俺が考え付いた物は誰もが考え付くありきたりな物だった。

プラチナのペアネックレス。

真にはプラチナが似合う。
プラチナ以外、考えられない。
凛として何処までも澄んでいる。
シルバーのように曇ることも無い―

真はプラチナだ。
































「…あっ…!」

俺の動きに合わせ真が揺れる。
そして、その真の首元でプラチナのネックレスも揺れる。
灯りを落とした寝室で唯一、灯っているベッドサイドの柔らかい光を受けてネックレスが
輝いている。
少し汗ばんで上気した真の肌の上で俺が真に付けた鎖は綺麗に輝いて俺の心を震わせる。

「…真…」

シーツを掴む手を掴み自分の首に回させる。
真を抱き締め、真に包まれながら何度もキスを繰り返す。
そして、俺は悟った。
今まで付き合った人間が何故、俺にペアの物を着けさせたがったのか。
それは自分の物だと誇示する為だ。
同じ物を着けている限り離れていても誰にも渡さないという主張。
相手を縛り付ける鎖。
だから、俺は真にそれを贈った。
お互いを好きだと思う心が二人を繋ぐ目に見えない鎖ならこのネックレスは俺と真を繋ぐ目に
見える鎖だ。

だから、ずっとこの鎖は真から外さない。


「…あっ、ぁんっ…!」

最奥を突き上げる俺の動きに真は瞳を閉じ俺の肩に爪を立てる。
しかし、そんな肩の痛みより真が俺とのセックスで感じてくれてることが嬉しい。

「…武史さんっ…」

もう限界が近いのだろう。
泣きそうな声で真が俺を呼ぶ。
すぐにでも達かせてあげたい。


でも、今日だけは―


「…ごめん、真」


今日だけは一緒に達きたい。


弾ける寸前で熱を塞き止められ達けない苦しさと終りのない快感に真の瞳には涙が浮かんでいる。

「…お…ねがい…もう…っ」

泣きそうな声で懇願の言葉をつむぐ唇に何度も口付ける。

「好きだよ、真だけだから…」

今の真に俺の言葉が伝わったかどうかは分からない。
だけど…
真は一滴の涙を零した後、小さく頷いた。



































セックスの後、相手を抱き締めたいと思ったことはなかった。
お互いに快楽を分かち合い貪り合った後に感慨なんてものは無い。
男の性欲は排泄欲に似ている。
出してしまえばそれまでだ。
どんなにイイ女でも男でも抱いてしまえばそれまででそれ以上は何もなかった。

真を抱くまでは―

真は違う。
抱いた後の方が愛しい。
俺を受け入れてくれた真と真の体が愛しい。
何時間でも抱き締めていたいと思う。













「ごめん、辛かったよね」

抱き締めたまま囁いた俺に真は首を横に振る。

「…謝らないで…」

ちらっと上目使いで俺を見、頬を染め瞳を伏せる。

「…嬉しかった…初めて武史さんと一緒だったから…」

消え入りそうな小さな声で告げられた告白に愛しさが込み上げてくる。

「好きだよ。真だけだ」

真を手に入れてから何回囁いたか分からない言葉を又、囁く。
そして、俺は俺自身に一人、心の中で笑った。
これじゃ馬鹿の一つ覚えだ。
壊れたレコードじゃあるまいし同じ言葉を何度も何度も繰り返す。
しかし、以前の俺なら馬鹿にして笑ってだろう言葉は囁くたびに俺に暖かい幸せを
もたらしてくれる。
勿論、その言葉を聞いてくれる真がいるからだが。
馬鹿でも何でも真が傍にいてくれるならそれでいい。
真が喜んでくれるなら何百回でも何万回でも誓いの言葉を囁こう。

ずっと、真の傍で…


「…僕も武史さんが好き」

俺の言葉に微笑み恥ずかしそうに告げる真に二人の想いがプラチナのようにいつまでも
輝き続けることを祈りながら俺は触れるだけの優しいキスをした。






■おわり■